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ひなた在宅クリニック山王
院長 田代 和馬氏
1989年宮崎県生まれ。経済的に厳しい母子家庭に生まれ育つも、奨学金で私立の中高一貫教育を受け、猛勉強の末宮崎大学医学部に入学。激務で知られる沖縄県立中部病院で研修医となり、離島や中山間地域で診療経験を積む。2019年、29歳で在宅医療に特化した「ひなた在宅クリニック山王」(東京都大田区)を開業。「断らない医療」を理念に、多くの困難な症例や社会的課題に挑み続けている。
在宅で最期を迎えさせるのが
目標ではない。
安心を積み重ねた結果、
そこが家だったが理想です。
JR大森駅から徒歩5分。オフィスビル3階の診療所を訪ねて驚いた。ドアを開けると、整然と並ぶデスク、忙しく動くスタッフ。医療機関というより企業のオフィスのようだ。診察室はなく、医療や看護の雰囲気もほとんどない。しかしここには常時医師10数人、看護師20人、医療事務が10数人、ドライバー20人が在籍し、訪問患者数は1,000人を超えるという。
開業7年余りで都内最大級の在宅療養支援診療所と成長させたのは、37歳の若き院長田代氏だ。
ひなた在宅クリニック山王
「行ってくれるんですか」
コロナ禍、保健所職員が驚いた
── 宮崎県出身。母子家庭の非課税世帯で育ち、医師となり、縁もゆかりもない東京で開業。短期間で規模を拡大出来た背景には、在宅に特化した診療体制と、パンデミック下での「断らない医療」があった。
開業2年目のある日、保健所から電話がありました。『コロナ感染者が自宅で療養している。往診できる医師が足りないので行ってほしい』と。デルタ株が猛威を振るい、病院は満床。多くの人が自宅療養を強いられていました。『はい、行きます』と答えたら、『えっ、行ってくれるんですか』と驚かれました。断られてることが続いてたようです。
患者宅に着つくと、苦しむ姿があった。「こんな状態なのにどこにもかかれていないことに愕然としました。保健所から『また、お願い出来ますか』と言われ、『僕らは断らないのがモットー。答えはイエスかハイしかありません』と答えました。」その後1日20人もの要請が届くようになり、診療所はコロナ対応の医療体制を再構築しました。
同期は大病院で毎日コロナと闘っていたのに、在宅専門の自分は何もしていない。置いてきぼり感がありました。だから菅首相が『中等症までは在宅で診よう』と言ってくれたときは膝を叩きました。やっと僕らも参加できる、役に立てると思ったんです。
「断らない」「逃げない」
どんな患者にも向き合う
── 田代氏の信念は「断らない医療」。精神疾患、複数の慢性疾患を抱える人、ゴミ屋敷や生活保護世帯など通常の在宅医療では対応が難しいケースでも決して逃げない。スタッフにも徹底している。
その原点は大学時代に出会った一人の講師だ。
「東大医学部卒で沖縄の病院に進み、地域医療や離島医療に取り組んだ若い医師の講義に衝撃を受けました。経歴を誇らず、大学の研修制度を批判し、僕らの気概のなさを嘆いた。地元宮崎出身でまだ29歳。 "医師の生き方にこういう道もあるんだ"と目を開かされました。」
田代氏はその医師の軌跡を追うように、沖縄県立中部病院(OCH)で医師人生をスタートさせた。
OHCは『断るな!見放すな!』というスピリットを徹底的に叩き込まれる場所です。都市部のように専門科だけでは通用しない。幅広いスキルを持つ医師を育てることが主眼です。
「僕が『逃げるな』『見放すな』と言っても限界があります。職員一人ひとりが共通の価値観をもたないと。最近は、僕も職員からそう言われています。最初のうねりを作ったのは僕かもしれないけど、それが、いまはそのうねりに僕も巻き込まれている。それが一番いいと思うんです」
病気の背景に社会的課題
創意工夫と頑張りで何とかなる
── 田代氏は多い月で1日12~13軒を訪問する。難しい症例、社会的課題、看取り
重い現場に向き合い続けているにもかかわらず、悲愴感や感じさせない。むしろ明るく若々しい。
「在宅を選んだのは、尊敬する講師のアドバイスが大きいです。『タッシー(僕のこと)がやりたい在宅はなかなかない。OCHスピリットを在宅でやりたいなら、自分たちでやった方がいい』と」
東京で開業した理由は「大都市でどれだけ通用するか試したかったから」
「沖縄だと、20~30キロ先の患者さんから依頼が来ますが、東京は直線距離で2~3キロ。効率よく回れます。患者数は今1,100人ほど。都内でもこの規模を1カ所で診ているのは珍しいと思います」
在宅は社会の縮図だ。「玄関を開けたら、天井までゴミが積み上がっていることもある。高齢独居、生活保護者、警察対応、行政対応、入管管理局対応・・・・・・。病気の前に社会的課題と向き合うことになる。でも、創意工夫すれば何とかなる。もちろん頑張らないとダメだけど、頑張れば必ず何とかなると思っています」
連絡先
医療法人社団ひなた
ひなた在宅クリニック山王
〒140-0013
東京都品川区南大井6-24-6
DAITOビル3階
(代)03−6429−8671

