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ふれあいの輪は、新しいホームケア・在宅介護を目指して、
(公財)フランスベッド・ホームケア財団によって
運営されています。

ふれあいの輪

福祉用具の活用事例Examples of welfare equipment utilization

介護用洗身用具「switle BODY(スイトルボディ)」

ベッドに寝かせたままで、
入れるお風呂があればいいのに…。

寝たきりの高齢者や身体が不自由な障害者を家でみるとき、家族が最も苦労するのが入浴だ。バスルームへの移動自体が重労働となる。「ベッドに寝かせたまま入れるお風呂があればいいのに」と思うが、そんな願いをかなえてくれる福祉用具が実在した。ベッドを濡らさず、汚さず、手軽に、簡単にシャワーを浴びたように洗身することができる、その名も「switle BODY」だ。はたして入浴、清拭に次ぐ第三の選択肢となるのだろうか──ひと月前に製品を導入したSさん宅にお邪魔し、生の声を聞いてみた。

こんなものがあったらいい
ネット検索で存在を知る

 東京都練馬区に住むSさんは、在宅で母親の介護を始めて5年になる。この間、最も悩んでいたのは入浴に関することだ。特に、寝たきりになってからの1年半は、浴室への移動すら現実的に無理だ。自宅の構造上訪問入浴の導入は難しく、継続的な医療処置を要する健康状態ゆえデイサービスの利用もできない。皮膚トラブルの心配を抱えながら、朝晩1日2回の清拭で何とか清潔を保ってきた。

 「ドボンと入りたい・・・。」諦めつつ呟いた母親の言葉に対し、キャンプなどで使う簡易浴槽を用意して、中にリクライニングチェアーを設置し母親を移乗、洗面所からシャワーのお湯を引く形で、ベッドサイドでのシャワー浴を試みたこともあった。訪問看護で入浴支援を受けていたが、準備から片付けまでが大変で、医療処置も含めると1時間半かけても終わらない。徐々に実施頻度は減り、一方で医療処置の内容は増えていき、次第にペットボトルと紙シーツを使用したシャワー浴や清拭に落ち着いてしまった。

 「シャワーでもいいから、お部屋で簡単に入れるお風呂のようなものはないかしら…」。前から気になっていたSさんは、ある日、インターネット検索を試みる。「寝たきり」「ベッド」「シャワー」「簡易入浴」などのキーワードを打ち込むと、すぐに一件ヒットした。電子レンジくらいの大きさで、見た目も非常にスマート。それが「switle BODY」だった。あったらいいなと思っていた用具が実在したのである。早速フランスベッドの福祉用具専門相談員に問い合わせたところ、「フラッとレンタル(短期間だけ使いたい、一度試してから購入したいというご要望に応え、フランスベッドの人気商品をレンタルできるサービス)」という制度を勧められた。

 製品が届き、使い始めて一月が経つ。使ってみた感想は「なかなかいいですよ。ちょっと感動しましたし、母も気にいっています。意外だったのは、シャワーヘッドのようにいくつもの穴からお湯が出るのではなく、中央の口から一本柱で噴出すること。指の間やシワくぼみを洗いやすい。特にいいと思う点は、準備や後片付けが簡単、入浴が短時間で済むこと、上半身と下半身に分けるなど部分浴を気楽にできること、ペットボトルなどと違って安定した温度でお湯を供給できるところ」という。

スイトルボディから出るお湯の様子

お湯を出すと同時に吸い取る
だからベッドを濡らさない

 いったいどんな仕組みになっているのだろうか。ここで製品を分かりやすく紹介しよう。「スイトルボディ」は、身体が不自由で入浴が困難な人が、ふだん使うベッドに横たわったまま身体を洗うことができるよう開発された介護用洗身用具だ。お湯に浸かるのではなく、瞬時に水分が蒸発するシャワーをイメージしてほしい。ノズルの中央部からお湯とボティーソープが出ると、瞬時にそれが吸い取られる。お湯を「出す」と「吸い取る」を同時に行なうことで、お湯がベッドやシーツに到達することなく、シャワーを浴びたようにさっぱりできるのだ。

 シャワーと違い、ノズルを身体に密着させながら滑らせるように洗うのがミソ。ヘッド中央のノズルから噴射されたお湯は、出ると同時に吸引される。身体に感じるのは水気ではなく温水の温かさ。約1ℓの水と専用ソープを使って全身を洗うことができ、所要時間もふつう15分程度と短い。一般的なシャワーに使用する水量と比較して大幅な節水を可能にするとともに、高騰する光熱費やCO2排出量の削減にもつながる。人手が少ない在宅に適した介護労働軽減ツールと言えよう。

 電気と少量の水があればどこでも手軽に洗身でき、衛生管理が難しい状況下でも皮膚疾患を予防できるため、水不足が発生した地域や災害発生現場での活用が期待されている。実際、2024年1月の能登半島地震の際には被災地で効力を発揮したという。

使い勝手も簡単で在宅向き
介護保険のレンタル適用を目指す

 在宅で使うとなると、介護する人はたいがい一人でしかも機械操作が苦手な高齢者が中心。使い勝手も極力シンプルにできている。洗身に使う水と専用ソープはそれぞれ専用のタンクに注入しておけばいい。洗剤も独自に開発された専用ソープを使う。電源を入れた後は、温水の温度設定(38℃~45℃)をするだけで準備が完了。シャワーヘッドのアタッチメントは簡単に交換でき、付属のシリコンヘッドを装着することで洗髪にも利用できる。

 「洗面所からお湯を引いてくる手間もないし、準備も後片付けも簡単です。以前、ペットボトルのお湯を使っていた時と違って、安定した温度のお湯がずっと出てくるので安心です。ウチではノズルを密着させてというより、普通のシャワーのようにあえて少し離して使っています。その方が汚れ落ちが見えやすいし、何よりも母が気持ち良いというので。ただその分、シーツは濡れてしまうけれどLサイズの紙シーツが1~2枚あれば充分です。」とSさん。「衛生管理上、容器内部を手洗いできるようにしたらもっといいですね。」と貴重なアドバイスを頂戴した。

 身体を洗う作業には「入浴」と「清拭(身体を拭く)」があるが、スイトルボディははたして第三の選択肢となりうるだろうか。在宅はもちろん、慢性的な人手不足に悩む介護施設においても、職員の介護負担軽減効果は大と言える。スイトルボディは先ごろ、国の「介護テクノロジー定着支援事業」において、「原則として補助対象」となる機器に指定された。個人的には、なるべく早い時期に介護保険のレンタル適用を実現してほしいと思った。

営業コメント

阿部 優哉

フランスベッド株式会社
メディカル東京第一営業部
メディカル練馬営業所

阿部 優哉

 この製品は清拭、訪問入浴の他となる新たな選択肢としての期待がかかっています。特筆すべき点は、機械が水からお湯を生成するため、お湯の用意が簡単な点と出るお湯を瞬時に吸い取る構造のためベッド上で使用してもベッドが濡れにくい点があります。ベッド上での使用であれば毎日の使用もご本人様の負担がより少ない状態でおこなうことが可能です。個人宅での導入のために介護保険制度への追加を検討している商品であるため、今後さらに認知度が高まっていくと考えております。

現在は未知の商品として個人宅以外の施設様等へ説明にお伺いすることも多々あります。商品説明にお伺いすると感動していただくことが多いため、我々もこの製品をもっと多くの方に認知していただくために活動することが急務であると考えております。