福祉用具の活用事例Examples of welfare equipment utilization
『Multimotion Chair Bath ROOMY(ロゴ)/AS300』
競輪・オートの助成金を活用し、
老朽化した機械浴(特殊浴槽)をリニューアル
介護施設、病院、身体障害者施設などには、一般浴室のほかに、歩行困難な人や重度の障害者が負担なく入浴できる機械浴(特殊浴槽)が設置されている。特殊浴槽はまたデイサービスの顔にもなる。とはいえ、数ある福祉機器の中でも高額な特種浴槽。老朽化したとはいえ簡単に買い替えたり、ましてや新設は難しい。そんな中、千葉県佐倉市でデイサービス併設のケアハウスを運営する「ケアハウスちとせ」(社会福祉法人千歳会)は、今年7月、最新鋭の特殊浴槽『マルチモーションチェアバス ルーミィ/AS300』を導入した。リニューアルに至る経緯は、また新機種の導入で入浴介助の現場はどう変わったのか──稼働して半月余りの現場を訪ねてみた。
デイサービスに機能訓練と並ぶ
もう一つの顔ができた
緑が多く高い建物が少ない佐倉市。閑静な住宅街から少し離れた小高い丘に、デイサービスを併設する「ケアハウスちとせ」はあった。4階建ての建物全体がケアハウス(完全個室60室)で、その1階部分がデイサービスとして開放されている。介護施設のよくあるパターンである。玄関を入るとすぐ右側に、スポーツジムばりの広目のトレーニング空間が広がる。パワーリハビリのマシンがズラッと勢ぞろいし、このデイが特に機能訓練に力を入れていることがわかる。
目指す特殊浴槽はすぐ左手にあった。広々とした浴室の壁際に、真新しい箱形の特殊浴槽「roomy(ロゴ)」と、同じ高さの貯湯タンクが設置されていた。ルーミィは介護入浴装置の専門メーカー㈱アマノの主力商品で、昨年秋の国際福祉機器展でも施設関係者の話題をさらった。導入してまだ1月に満たないこともあり、浴槽の白さとクリアーなデジタル表示が目に飛びこんでくる。
カタチやサイズは一般的な機械浴と変わらないが、マルチモーションチェアバスというサブタイトルにあるように、入浴介助の現場の声を集約して開発設計されたチルトリクライニング式のシャワーチェアに特徴がある。座った姿勢のままで、脚を伸ばした長座位で、あるいは横に寝た姿勢でも、利用者一人ひとりにあった姿勢で入浴できるのがミソ。
それでいてボディーはコンパクト。狭い浴室にも設置でき、介助する側の作業スペースも十分に確保されている。扉上部が覆われていたこれまでのチェア浴槽では難しかった入浴中の足先のケアやマッサージが入念にできること、さらにはボタン一つで操作できる「配管洗浄プログラム」や「全量ろ過殺菌システム」など、衛生管理面にも最新の技術が駆使されている。デイサービスに、機能訓練と並ぶもう一つの顔ができたと言ってよいだろう。
20年以上経過し老朽化した機械浴
助成金制度を活用して購入
デイサービスセンターちとせは、ケアハウス併設の通所施設ということもあり、利用者の大半は自立度の高い元気な高齢者である。特殊浴槽が必要なのは歩行や座位保持が難しく、一般浴槽に入るのが難しい車いすの人だ。その意味で、機械浴の必要性は必ずしも高いとは言えない。実際、利用者は1日平均3~4人という。ルーミィーの価格は518万円(内訳ルーミィー396万円、シャワーチェア99万円、運送費23万円)というから、コスパを考えるとかなり思い切った投資に思えてくる。主任生活相談員の日向竜介さんが舞台裏を明かしてくれた。
「一番の理由は老朽化が進んだこと。先月まで使っていた特殊浴槽は、施設開業当初から20年以上も使いこんできた旧式タイプ。扉がしっかり閉まらなかったり、汚れがひどいのにうまく掃除できないなど、いつ故障しても不思議でない状況にありました。特に心配なのは衛生面で、職員が毎回消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)を使って念入りに掃除をしなければならず、そのために貴重な時間と労力が費やされてしまった」
もちろん現場からは、何年も前から設備更新の要望が上がっていた。しかし高額な装置ゆえにそう簡単にはいかない。今回、リニューアルすることができたのは、特殊浴槽購入に関する助成金(競輪とオートレースの補助事業)申請が通ったことが大きいという。
「デイサービスに来るお客様の一番の目的はお風呂です。自宅でお風呂に入れない人にとって、週に1~2度のお風呂は最高に楽しみな時間。ご家族もそれを期待しているし、お風呂の充実はデイの必須条件です。しっかりした機械浴があればケアマネさんも紹介しやすいですから」
お客様の反応はどうだろうか。「新しくなったね、きれいになって気持ちよかった、と皆さんおっしゃってくれました。でも中には、旧式も箱形で同じ大きさなので気づかない人も。それでもいいんです。きれいなお風呂に入りたいというのは誰もが思うこと。新しくするだけでメリットがあります」
お客様の表情が見える背面誘導
簡単に取り外せる高性能ろ過フィルター
現場の声も紹介しよう。介護職員の須田香代さんは、扉の開け閉めの容易さや操作ボタンの使いやすさなど、細部に介助する人にやさしい作業環境が整備されているという。
「壁を背にしてシャワーチェアを誘導するので、最初のうちは不安に感じる人もいました。ただ、壁側を向いたまま入っていく旧式の場合、お客様の様子を見るには奥にまわらねばならなかった。ルーミィの場合、背面から浴槽に入るのでお客様のお顔を見ながらになるので、微妙な表情の変化から適温かどうかを読み取ることができます」
入浴時間など、音声によるアナウンスも思いのほか好評のようだ。「〈5分経過しました〉というように機械が音声で教えてくれるので、ほかの作業をしていてもいちいち時計を気にしなくてすむ。介助する側にとっていちばんありがたいのは、衛生管理とメンテナンスのしやすさですね。ろ過フィルターは工具なしで簡単に着脱できるし、ディスク形状になっていてとても掃除がしやすい。今まで洗浄できなかった気になる内部までお掃除できるようになりました。メンテナンスの時間と労力が以前よりかなり短縮できました」
肝心な給湯温度についても、これまでのように職員の肌感に頼る必要はなくなり、特にぬる目の温度が好きなお客様には便利。旧式ではできなかったシャワーの温度設定もできるようになった。
「あえて注文をつけるとすれば、追い炊き機能を付加できないかということ。それと、シャワーチェアのベルト幅が広くて圧迫感がやや強いかなと。3本もいらないと思います。お客様からの要請もあり、脚のベルトは外して使うことが多いので」と須田さんは指摘する。
特種浴槽の充実は当たり前
あくまで機能訓練で勝負したい
設置工事に関しては、もともと特浴があった浴室に据え付けたので、給排水などの大規模な改修工事の必要はなく、工事は1日で完了した。機種選定に現場職員の意見が反映されたのかを聞いたところ、それはなかったと日向相談員。特殊浴槽に限らず、現場の職員が福祉用具メーカーや新製品の情報を入手しているケースは少ない。本事例の場合も、機種選定や導入時期の判断は事業運営幹部が下したという。
その際、助成金活用を含む的確なアドバイスでリニューアルをサポートしたのが、いつも福祉用具の相談に乗ってくれるフランスベッドの営業マンだった。最後に日向相談員からのメッセージを。
「特殊浴槽はデイサービスのマストアイテムです。新しいに越したことはありませんが、お客様にとっては当たり前のことで、それ自体がセールスポイントにはなりえない。ウチの施設は機能訓練をウリにしています。パワーリハビリのマシンを豊富にそろえているし、デイサービスではあるけれど、柔道整復師2名と理学療法士1名がいて、お客様の身体状況に合わせたリハビリやマッサージを提供できる。そこを強調しておいてくださいね」
■マルチモーションチェアバス 「ルーミィ/AS300」
コンパクトサイズながら、高身長の方も入浴できる対面型の座位入浴装置です。入浴角度は、チルトリクライニングと3段階のリクライニング機能、さらに 「椅座位」「長坐位」姿勢モードも搭載しており、入浴者の様々な姿勢に対応できます。また、脚先までスペースにゆとりがあるため、全身リラックスして のびのびと入浴できます。
製品仕様
・AS300ルーミィ
外形寸法 2030(L)×960(W)×1128(H)mm
材質 浴槽:FRP フレーム:ステンレススティール
・シャワーチェア
外形寸法 1145(L)×640(W)×1130(H)mm(搬送時)
主な特徴
・レイアウトフリーでさまざまなタイプの浴室に設置可能。
・マルチモーションだから入浴姿勢も思いのまま。入浴者はシャワーチェアに座っただけ。腕置きサポートとサイドフェンスが身体をしっかり支える。
・お湯張りは約90秒とスピーディ。
・扉側は大開口。介護者は足先のケアもストレスフリーに行なえる。
・全量ろ過殺菌システムできれいなお湯を。簡単に取り外せる高性能ろ過フィルターで、衛生管理も効率よく。
社会福祉法人千歳会
理事長 左 敬真