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ふれあいの輪は、新しいホームケア・在宅介護を目指して、
(公財)フランスベッド・ホームケア財団によって
運営されています。

ふれあいの輪

介護最前線Front line of Nursing

伊藤 浩一氏

社会福祉法人北養会

理事(兼・特養もくせい施設長)
伊藤 浩一
氏

ICT導入を契機に“三位一体” の取組で
日本でいちばん働きやすい特養に

需要は拡大しているにもかかわらず、経営面で苦境に立つ特養は少なくない。特養は、公的な介護報酬で運営されており、人件費や光熱費の高騰を利用料に反映させにくい構造があるためだ。その中で、経営効率や職場環境の改善が高く評価されている施設がある。茨城県水戸市の「特別養護老人ホームもくせい」もその一つである。すべての始まりは、70床すべてに「シートセンサー型見守り機器」を導入したことだった。

特別養護老人ホームもくせい(茨城県水戸市)

外観 外観

介護ベッド 介護ベッド

センサー付きベッド センサー付きベッド

タブレットで交信 タブレットで交信

データサーバー データサーバー

職員のアクセスデータをPCで管理 職員のアクセスデータをPCで管理

職員 職員

シートセンサー型見守り機器の導入

 水戸駅からクルマで10分ほどの場所に、多世代交流の拠点として知られる「水高スクエア」がある。旧制水戸高等学校跡地を活用した広大な敷地に病院・高齢者施設・専門学校・保育園・フィットネスクラブなどが集積している。「特別養護老人ホームもくせい」(定員70名/7ユニット)はその一角に位置する。

 同施設は2024年の全国老人福祉施設大会・研究会議」で、「経営部門優秀賞」を受賞。厚生労働省の「介護職員の働きやすい職場環境づくり(2025年)」でも、ICT導入による業務負担軽減への取組が評価され、内閣総理大臣表彰を受けた。見学者が訪れるようになったのはここ数年のことだ。

 まずは、表に示した数値をご覧いただきたい。短期間での劇的な改善は目を見張るものがある。これらは「生産性向上」「待遇改善」「人材育成」の側面から抽出した結果である。

【内閣総理大臣表彰を受けた取組と成果】

■ 生産性向上の取組(令和4年12月~)
取組内容・指標項目 改善前 改善後
シートセンサー型見守り機器を全床導入
・夜勤1人当たりの巡視時間
53分 26分
シートセンサー型見守り機器を全床導入
・夜勤1人当たりの排泄介助時間
180分 90分
施設稼働率
(施設定員に対する利用者数)
97.8% 99.9%
■ 待遇改善の取組(令和3年4月~)
取組内容・指標項目 改善前 改善後
子育て男性職員と外国人職員の休暇支援
・男性職員育児休業取得者
0名 1名
子育て男性職員と外国人職員の休暇支援
・外国人職員帰国支援者
0名 2名
■ 人材育成の取組(令和4年10月~)
取組内容・指標項目 改善前 改善後
異業種コラボ等でやりがい創出
・外部講師による研修参加者
22名 110名
異業種コラボ等でやりがい創出
・職場実習・体験受入実績
46名 134名
■ 負担軽減・満足度指標
指標項目 改善前 改善後
有給休暇の平均取得日数 10.1日 12.5日
離職率 4.9% 0%

リビングフロア リビングフロア

室内カメラ 室内カメラ

スマホで交信 スマホで交信

「巡視」と「排泄」は大幅に削減できる

シートセンサーはマットレスの下に薄いシートを敷くだけ、が体動・呼吸数・心拍数データは事務所のPCだけでなく職員のスマホにも送信される。

導入当初は「ベテラン職員の中に抵抗感があり、転落防止のセンサーとしてのみ使われていた。」

しかし、看取りの場面で呼吸・心拍数の下降が可視化されることで、職員が心の準備ができ、活用の幅が広がった。永眠後の入所調整も迅速になり、改善につながった。

 業務を見直した結果、夜間の「巡視」と「排泄介助」の時間を大幅に削減できることが判明した。巡視は2時間おきから4時間おき。また、見回りは要介護度の高い人を優先し、通常の見回りはセンサー確認に切り替えた。

結果、夜勤1人当たりの平均巡回時間は53分→26分に半減。宿直員も廃止でき、人件費に換算で年間200万円の削減効果が生まれた。

特殊浴槽 特殊浴槽

高性能ドライヤ 高性能ドライヤ

専門職のスキルとマネジメントのスキルは別

 伊藤施設長はICTだけが成功要因ではないと強調する “三位一体”の成果だという。 1.ICT導入による業務効率化
2.職員の待遇改善
3.人材育成の強化

「生み出した時間を、育児休業休暇や外国人職員の帰国支援などの待遇改善、外部講師による研修や異業種交流などの人材育成に振り向けました。」と伊藤施設長は語る。

 当初、施設の稼働率は下降の一途をたどっていた。近隣に新施設が建ち、強みが必要だと感じ、シートセンサー型見守り機器の全床導入という大胆な決断をしたという。伊藤施設長は、経営学修士(MBA)を持ち、「専門職のスキルとマネジメントのスキルは別物」と考える。

若手職員を選抜して、組織変革チームを作り、外部の経営コンサルも導入した。

 その結果、男性職員の育児休業取得、外国人職員の帰国支援、有給休暇の増加、離職率ゼロなど特養では実現が難しい職場環境の改善が達成された。最後に生産性向上にゴールはない
「今取り組んでいるのはこの状態をいかに継続するかということ。生産性向上にゴールはありません。常に業務改善に取り組む組織にしたい」伊藤施設長は人事評価制度の刷新にも着手している。

連絡先

社会福祉法人 北養会
特別養護老人ホームもくせい
茨城県水戸市東原3-2-7
http://hokuyoukai.jp/