MENU

閉じる

ご意見・ご感想

ふれあいの輪は、新しいホームケア・在宅介護を目指して、
(公財)フランスベッド・ホームケア財団によって
運営されています。

ふれあいの輪

介護最前線Front line of Nursing

味元 佳恵氏

ゆいま~る多摩平の森/東京都日野市

ハウス長 味元 佳恵

UR団地をリノベーションして
バリアフリーに。
サ高住で元気なうちから
セカンドライフを楽しむ。

サービス付き高齢者向け住宅、略して「サ高住」。医療・介護サービスとの連携がなされた、自立した高齢者向けの賃貸住宅である。需要の高まりから、新たにサービスを開始する事業者も多い。「ゆいま~る多摩平の森」は2011年にサ高住の制度ができたとほぼ同時に開設し、以来ほぼ満室を維持している。開設時からの入居者もおり、待機者も多くいるほどだ。これほど支持を集めている理由は「恵まれた利便性」と「心が通う人の対応」にあるという。このあたりを「ゆいま~る多摩平の森」ハウス長の味元佳恵氏にお話を聞いた。

ゆいま~る多摩平の森

ゆいま~る多摩平の森 ゆいま~る多摩平の森

利用者の作業 利用者の作業

恵まれた利便性と自然環境

「ゆいま~る多摩平の森」は東京多摩の緩やかな丘陵上にある。見上げると、空が高く広い。緑も多く自然が豊かなのに、JR豊田駅から高齢者の足でも10分ほどと交通の便がいい。駅前にはショッピングモールがあり、大きな医療施設も揃っている。

「この交通の便が気に入って入居される方が多くいらっしゃいます。都心にもすぐに出られますし、門限もありません。ご家族やご友人の来訪も自由です」と味元氏は紹介する。

ゆいま~る多摩平の森は、UR都市機構の進める多摩平の森ルネッサンス事業から誕生したもので、空き家となった団地5棟のうち2棟が若者向けのシェアハウス、1棟が家庭菜園付きのファミリー向けの賃貸住宅、そして残り2棟が高齢者向けに改修した「ゆいま~る多摩平の森」と「コミュニティハウス」となっている。サ高住(32戸)、コミュニティハウス(31戸)2棟63室、夫婦7組を含め70名が入居している。

サ高住として求められている毎日の安否確認、緊急時の対応、生活相談の3つのサービスを提供するが、介護は行っていない。

「ご入居の時は自立されている方でも、高齢になるにつれ介護が必要になる方もいます。そのような方の相談にのって、地域包括支援センターと連携しながら、訪問介護、必要であれば訪問診療、訪問看護やショートステイあるいは入院等へとつなげています」(味元氏)。

「介護が必要になっても入居される方がほとんどで「ゆいま~る多摩平の森」で暮らしていただいています。」

食堂 食堂

開設当初から入居している方も多い

サ高住が制度化され提供されるようになった2011年のサ高住制度が開始と同時に、「ゆいま〜る多摩平の森」は誕生した。開設当初からの入居者も多い。よほど居心地がいいのであろう。

昼間は2人のスタッフが常勤しており、夜間も緊急時に対応するスタッフがいる。安心安全なのである。

「このスタッフで70名に対応するのはギリギリですが、そこにやりがいを感じる人材が揃っています。いいスタッフに恵まれていると思います」(味元氏)。

ユニークな食事処「ゆいま~る食堂」も自社運営しており、手作りを心がけ、地域の方々にも解放している。

「入居されてから元気になる方が多くいます。日々の生活で達成感があるとおっしゃいます」と、味元氏は笑顔を見せる。できないところは支援するが、できるところには手を出さず見守る方針だ。自分の足で散歩をする、買い物をすることに自立の達成感を覚える入居者が多い。

「だからここは施設ではなくハウス(家)なんです。私はそのハウス長なんです」と、味元氏は語る。

食堂の手作りの料理

食堂の手作りの料理

食堂の手作りの料理

食堂の手作りの料理

本人と家族が見学して入居を決定

URならではの42㎡というゆとりある部屋の広さが魅力的だ。自宅から移っても、他の老人介護施設にありがちな圧迫感がない。入院ではなく引っ越しの感覚で移ってくることができる。

「自由」ということに関してはこんな例があった。ある程度体の動く方であったが、先々のことを考えて介護の手厚いホームに入ることになった。しかし、そのホームでは安全最優先として、外出が制限され、体調は悪化するばかりか精神まで病んでしまった。そこで、ご家族の方が「ゆいま~る多摩平の森」を探し出して移ってきた。

「その方は本当に今は元気。朝晩の散歩を欠かしません」と味元氏は説明する。

もっとも、安易に入居することは避けてもらっている。

「やはり、扉を閉めれば一人きりになるわけですから。ご家族の方にも、入居したら、それっきりということはご遠慮いただいております」と、きっぱりと口にする。

ご家族の方にも部屋を見学していただき、ご本人とご家族をスタッフが面談し、最終的に味元氏が会って意思を確認する。良いことばかりではなく、良くないこともきちんと伝えている。

見学後は2週間の取り置き。体験入居はないので、この2週間の間で判断していただき、気に入れば申込書を記入していただき、それを受理して契約の流れになる。契約成立後は2カ月以内に入居という手順だ。

フロント フロント

心が通う「人」の対応

他の高齢者施設とはどこが異なるのだろうか。

「人による心が通う対応だと思います」と味元氏は語る。介護の世界において、機械化や効率化は避けられないが、人ができるのであれば人が対応したほうがいい。そこにコミュニケーションが生まれ、このハウスの役割と価値があるという。

例えば安否確認は「今日も元気です」ということを伝えるためフロントまで降りてきてもらい、サインをしてもらう。各部屋には緊急連絡用のボタンがあり、日中夜間を問わず即座に駆け付ける。入退院の付き添いや介護保険の申請のお手伝いもしている。

最近の傾向としては、1人暮らしの高齢者がオレオレ詐欺などの特殊詐欺の被害を恐れ、入居してくる場合が多いという。家族はいるのだが、離れて暮らしている。家族と相談の上、ここを探し当て家族ともども見学に来るというパターンだ。

ご本人が地方にいて家族が東京で暮らしており、郷里から父母を呼び寄せることも多い。まだ介護は不要なのだが、1人で置くのは不安である。施設に入れるほどではないが、心配ということだ。昨年の例では、愛知から来たり、兵庫から来たりしている。ここなら都心に近いし駅にも近い、外出も自由である。

サ高住向けの2棟 サ高住向けの2棟

建物の古さが温もりになっている

建物は古いが、それが心地よさになっている。「ここを終の住み処にしたい」という人さえいる。複数の人達の中でゆるやかな交流もある。

「人の中で暮らすということが、長く豊かに生きるコツなのかも知りませんね」と味元氏は微笑む。

1人で暮らすことはそれだけでエネルギーを消耗してしまうが、共に生きることで、エネルギーを補充し合うことができるのかもしれない。

もちろん1人を好む人もいる。そういう入居者には部屋まで食事を運ぶこともしている。

高齢者施設から移ってきた方もいる。病気を患って介護の厚い施設に移り住んでいたが、リハビリによって介護度が下がった。そこで家族の方が、その施設ではあまりに不自由だからと、こちらへ親御さんを移すことにした。ここなら自分らしい生活ができるという理由だ。移ってから本人に「ここに連れてきてくれてありがとう」と言われたそうである。

人がいるから温かみがあって、夜もよく眠れるという声もある。見守ってくれている人がいる、誰かと一緒に暮らしているということが、不安から安心に変わる。人と建物の古さが温もりになっているのである。

年を取ると外出が億劫になりがちだが、ここでは環境が外へ誘い出してくれる。多くの方がいきいきと散歩に出ている。趣味に打ち込む人も多い。人生が豊かになったと表現する人もいる。

入居者とスタッフの強い信頼関係

平均年齢は86歳。高齢の方が多いだけあって、教わることも多い。

「人生経験豊かなだけあって褒め方も上手、うまく乗せていただいて仕事をしています。私達スタッフをやる気にさせてくれるんです」と味元氏は笑う。

「ゆいま~る多摩平の森」の運営母体は株式会社コミュニティネットである。サ高住「ゆいま~る」シリーズをはじめ、子どもから高齢者まで多世代が共に暮らせるコミュニティづくりを事業化している。同社は介護に力を入れ、介護サービス付きのサ高住「和気ハウスシリーズ」も提供開始している。既存の入居者には大きな安心材料となるであろう。

現場側としても、今自立している方に介護が必要になったら、地域の介護事業所やケアマネージャとの連携の中で、安心の日々を支えたいと考えている。

「末永く安心して気持ちよく住める環境を維持していきたい。そのためにも入居者とスタッフとの信頼関係を大切にしていきたい。現場を守り続けていくことが私達のスタッフの使命です。入居者との信頼関係の構築が一番だと考えています」と最後に味元氏は力強く語った。

図書館

小規模多機能

連絡先

ゆいま~る多摩平の森
〒191-0062
東京都日野市多摩平3-1-6
TEL:042-514-9416
URL:https://yui-marl.jp/tamadaira/