知っとく!Shittoku
ライフエレメンツ株式会社 サービス部
カスタマーサクセスリード 神子典子氏
スマートホームサービス。
介護労働軽減の技術ノウハウは、
今、施設から「在宅」に。
センサーやデジタルネットワーク技術の進化により、介護施設における労力削減は何歩も前進した。では、在宅はどうだろうか。老々介護、高齢者の単身世帯が急増する中、介護者の精神的・肉体的負担は増すばかりで、安否確認やリスク回避ができるツール需要が急増している。「MANOMA親の見守りセット(フランスベッド)」(サービス提供:ライフエレメンツ)は、そんな親元を離れて暮らす子どもたちの願いに応えた。発売7年で出荷台数38万台を突破。スマートホームサービスの隠れたヒット商品を紹介したい。
カメラ・センサー・家電を
スマホアプリでつなぐ
まずはどんな商品なのか──。「MANOMA 親の見守りセット(フランスベッド)」は、カメラやセンサーなどの機器とスマートフォンアプリを連携させることにより、実家を離れて暮らす子どもたちに遠隔で親の生活の様子や安否を確認できるようにした。例えばスマホで家の中の様子を確認したり、家電を操作したりできる。親が転倒していないか、室内の環境が保たれているかがわかるのだ。状況を把握するだけでなく、声かけをしてコミュニケーションをとったり、遠隔操作によりエアコンのスイッチを入れたりもできる。
システムを構成するのは、各機器をつなぐ「AIホームゲートウェイ」と、録画・通話機能付きの「室内コミュニケーションカメラ」。リビングや玄関など、様子を見守りたい場所に設置するだけだ。さらに、ドアの開閉を検知する「開閉センサー」、部屋の温湿度・照度を検知し家電を遠隔操作するための「スマート家電リモコン」、玄関錠の開閉状態を検知し遠隔で開施錠する「Qrio Lock」をオプションで追加することでより便利になる。
窓やドアに設置した開閉センサーや、カメラに搭載された人感センサーが不審者の侵入を感知し、警報音を発報してホームセキュリティの役割も兼ねるのだ。
見守り環境の様子
親の見守り需要にも対応することで
売り上げを一気に伸ばす
「発売当初は、“高齢の親御さまを見守る”という製品コンセプトではありませんでした。若い共働き家庭が増えているので、遠隔から家電を操作できたり、ドアに鍵をかけたりできれば便利だろうなと。ところがユーザーの声を聞くと、実家で一人暮らしている親が心配で、遠くから生活の様子や健康を見守るために使っている人が非常に多かったので」
システムの開発・販売を担うライフエレメンツ㈱サービス部企画課の神子典子さんが明かす。同社は、通信事業などを運営するソニーネットワークコミュニケーションズ㈱より分離独立した新しい企業で、ネットワーク通信技術はいわばお家芸。“スマートホームサービス”に特化した企業として歩み始めた。
スマートホームとは、IoTやAI技術を活用し、家電や住宅設備をネットワークに接続して、より快適な生活を実現する住宅や暮らしのこと。インターネットに接続されたデバイスやシステムを利用して、家庭内の様々な機能や設備を自動化したり、遠隔操作を可能にしたりする。
「MANOMA」のリリースは2018年10月。立ち上がりは今一つだったが、2023年12月にマーケティング戦略を転換し、親の見守りに特化した「親の見守りセット」を新たにリリース。以降、離れた親の見守り分野での申し込み数が加速し、今日に至る。現在、累計販売台数は38万台を突破し、40万台に迫りつつある。同社・熊田雅之サービス部長は補足する。
「家の見守りやセキュリティを目的とした製品は世の中にたくさん出ています。しかし、カメラだけであったりGPSセンサーのみであったりなど単独の機器がほとんどで、個々の機器をすべて統合して一つのアプリで見られるのはおそらくMANOMAだけでしょう」
見守り環境の様子
電話に出られない高齢者とも
ビデオ通話でコミュニケーション
「MANOMA」の特筆すべきポイントは、通話・録画機能を持っていること。介護者がスマホを見ながら声掛けするとカメラのスピーカーから声が出るので、そこでコミュニケーションが成り立つ。電話をかけてもなかなか出ない人、携帯電話の操作が苦手な人にも有効だ。また、転倒したときなどは、録画された映像を再生することで、転倒したタイミングや状況を確認することができる。
他のスマートホームサービスや防犯システムとの大きな違いは、レンタル(初期費用1,650円、月額料金3,058円〜)で提供していること。少ないランニングコストで手軽に安心・安全な見守り環境を手に入れることができるのだ。
ウェブサイトから申し込むと、最短翌日で発送され、機器(AIホームゲートウェイ、室内コミュニケーションカメラ、申し込んだ場合は追加機器)が届く。MANOMAアプリにログインする。あとは、マニュアルに従い機器を設置・設定すればよい。設定が難しい場合は初期設定代行サービス(実質無料)や、電話で相談できる「MANOMA解決サポート」があり、安心だ。
認知症対策や防犯にも
広がる用途
実際に、どのような人がどのような用途で利用しているのだろうか。ユーザーの声を紹介しよう。
『デイサービスのお迎えやヘルパーさんの実家への出入りが増えたために導入。仕事の合間にスマホをチェックしたところ、高齢の母が転倒していることが判明。すぐにヘルパーさんに連絡をとり大事に至らずに済んだ』
『耳が遠い父。電話してもなかなか出ない。聞こえていないのか、外出しているのか、あるいは体調を崩して出られないのかわからずに困っていたが、MANOMAを入れたことで映像からリアルな今を知ることができた』
『両親はエアコンが嫌い。倹約家でもある。真夏でもエアコンをつけたがらないので熱中症が心配の種だった。猛暑日などは温湿度をチェックし、自分のスマホから遠隔でエアコンのオンオフや設定温度をコントロールしている』
『母が施設に入ってから、認知症傾向にある父の夜間などの徘徊が心配。玄関ドアに開閉センサーを付けることで最悪の事態を回避できるようになった』
『防犯システムとして役立てています。開閉センサーやカメラの人感センサーが不審者の侵入を感知すると、私のスマホにそれを知らせてくれる。警備会社と契約するよりもずっと安上がりだ』
『病院に検査に出かける親。その準備を、カメラを通して指示できた。今までは親の家に行って支度を手伝う必要があったが、家に行かなくてもよくなり、負担が減った』
『家の鍵をどこに置いたかわからなくなったが、カメラに録画されていて見つけることができた。録画機能は便利』
『外出先から家電を操作できるので、消し忘れた電気を消したり旅行の間は逆に点けたり。電気代の節約や防犯対策にも貢献している』
単身高齢者世帯の急増
AIが可能性を広げる
高齢化や世帯の小規模化が進む中、65歳以上の高齢者の単身世帯が急増している。厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」によると、昨年6月の時点で、65歳以上の高齢者が一人で暮らす単身高齢者世帯はおよそ903万1,000世帯。前年より47万8,000世帯も増え、統計を取り始めて以来最も多い数字となった。さらに、単身高齢者世帯のうち、75歳以上の後期高齢者の割合が61.7%を占めた。
一方で、未婚率の上昇を背景に単身の高齢者世帯数もまた上昇の一途をたどっており、見守り需要もこの先さらに増えると推測される。こうした世の中の動きを追い風に、スマートホームサービスへの期待感はさらに高まっていくだろう。
「今後はAIを柔軟に活用することにより、通常と異なる行動を検知して転倒予防につなげたり、トイレのセンサーを活用することで病気の兆候をつかむなど、多機能化に拍車がかかっていくと思います」(熊田部長)
なお「MANOMA」は、昨年12月、一般社団法人日本在宅介護協会の認定品に認められた。
連絡先
ライフエレメンツ株式会社
〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-11-2
フロンティア代々木3F
https://life-el.com