日日- HiBi - Day-to-Day
あきらめない、勇気―
横浜は大道芸の街だ。公園やイベント等で
遭遇することがある。今までは全く興味を示さ
なかった夫が、ふと足を止めたのがきっかけだっ
た。当時の彼は仕事上で大きな悩みを抱えていた。
大道芸人のXさん。バルーンアートにジャグリ
ング、次々技が繰り出されていく。始めは小さか
った人の輪が、気づけば大輪の花を咲かせていた。
とは言え完璧とはいかず、特に大技では幾度も
失敗をしていた。それも全て笑いに変えながら、
成功するまで挑み続けていた。
ラストは見事、拍手喝采!
屈託のない笑顔、その瞳の奥にどこか漂う哀愁。
前職をリストラされたという体験や、大道芸人と
しての苦労なども笑い話に変えながら人々を魅了
する、彼の生き様すべてが「芸」だった。
何度も遭遇する内に、私たちはすっかりXさん
のファンになった。どんな大技を華麗に決める他
のパフォーマーより、彼を応援したい気持ちが込
み上げてきた。
夫はあの日あの瞬間、彼に何かを救われていた。
今では出会う度に握手を求め、「ファンです!」
と帽子にお礼を投入している。感謝をこめて―。
私たち夫婦のゆるやかな推し活はこれからも続い
ていくのだろう。
書家/石崎 甘雨