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ふれあいの輪は、新しいホームケア・在宅介護を目指して、
(公財)フランスベッド・ホームケア財団によって
運営されています。

ふれあいの輪

福祉用具の活用事例Examples of welfare equipment utilization

小宮山 啓介氏

特別養護老人ホーム 大洋園

介護長 小宮山 啓介

毎日の寝返り支援は腰に悪い、
腕の巻き込みも怖い……
これら課題を「寝返り支援ベッド」が解決!

介護は厳しい力仕事である。車椅子とベッドの間の移動は、介護者の腰に負担を与えるし、夜間の寝返り支援は腰のみならず、腕の巻き込み事故の危険も伴う。増えつつある外国人介護職員、とりわけ東南アジア系の方々は体が小さいこともあって、身体的な負荷が大きい。そこで特別養護老人ホーム 大洋園は「次世代介護機器検討委員会」を発足させ、その活動の一環で導入したのがフランスベッドの提供する「自動寝返り支援ベッドFB-640A」であった。身体を動かすことが困難な方の寝返りを自動でサポートするベッドである。介護職員の精神的・肉体的負担が大幅に軽減されたという報告が上がっている。

特別養護老人ホーム 大洋園

特別養護老人ホーム 大洋園
住所 〒198-0023 東京都青梅市今井5-2440-141
TEL 0428-31-3666
従来型定員 個室20室 4人部屋25部屋 計120名
ユニット型定員 1ユニット10名×4 計40名

外国人比率の大きい大洋園

特別養護老人ホーム 大洋園の開設は1983(昭和58)年。東京都青梅市を中心に、在宅介護が難しい寝たきりや認知症高齢者への入所サービスを提供している。

敷地は3,300坪以上と広く、北側には青梅スタジアム、東側は牧場、西側には東京都畜産試験場がある。

「春には桜の下を回遊する入居者の方が多く見られます。夏には庭で夕涼み会も実施しています」(小宮山氏)。

外国人介護職員が多いのも大洋園の特徴だ。2017年度から毎年、EPA・特定技能実習生を中心に複数名ずつ受け入れ、今では、常勤介護職員のうち、外国人職員25名、日本人職員35名の構成で日々の介護を行っている。

外国人技能実習生の定着と技術向上を目的に、国家資格である介護福祉士試験対策セミナーも施設内で提供している。少人数制で、分厚い参考書を片手に講師から説明を受ける風景が、院内で毎日のように見られる。

「おかげで、皆さん試験には一発で合格しています」と小宮山氏は顔をほころばせる。

腰痛は介護職員の職業病

大洋園では「次世代介護機器検討委員会」を2021年に発足させ、毎月第一月曜日に会合を開いている。施設長、生活相談員、看護師、機能訓陳指導員、介護職の8名で構成される介護支援用機器の導入を検討するプロジェクトである。

背景には介護職員の職業病ともいえる腰痛対策があった。多くの施設がそうであるように、大洋園でも腰痛を訴える介護職員が多く、退職してしまうことも少なくない。とりわけ、ベトナムやネパール出身の外国人職員は、日本人と比べて小柄な職員が多く、早い段階で腰痛を訴える。介護職員の確保が難しくなっており、安定したサービスを継続していくためにも、腰痛による休職や退職を減らしていく必要に迫られていた。

そこで、次世代介護機器検討委員会が第一弾として導入したのが「移動式リフト」であった。ベッドから車椅子へ、車椅子からベッドへの移乗、ポータブルトイレへの移乗を支援するリフトである。

それまで車椅子とベッドの間の移動は、介護職員2名で持ち上げていた。これでも、負担が大きく、入居者の中には90kgの方もいて、2名以上で取り組むことがあった。これら職員の負荷が大幅に減り、精神的にも解放された。

2019年に移乗用リフト2台を導入し、後に2台を追加して現在では4台となっている。

寝返り支援ベッドの検討開始

次に委員会で議題となったのが、身体を動かすことが困難な方の「寝返り支援」であった。少ない職員で夜間帯2時間おきの体位変換も腰痛の大きな要因となっていた。また、薄暗い室内での体位変換は、腕の巻き込み事故を起こしてしまうのではないかという不安もあった。

ここで候補となったのがフランスベッドの提供する寝返り支援ベッド「自動寝返り支援ベッドFB-640A」であった。自動寝返り機能で、ゆっくりと時間をかけ、ベッドを傾けて体位変換が行える。看護・介護職員への介助負担を軽減させるばかりではなく、利用者の睡眠を妨げることがない。

「ちょうどこのころ、フランスベッドがCMを展開しており、これは便利と注目していました」と小宮山氏は寝返り支援ベッドを知ったきっかけを話す。

最終的にフランスベッドを選んだ理由はどこにあるのだろうか。

「ほかに選択肢がありませんでした。フランスベッドに来園いただいて、プレゼンテーションとデモンストレーションを受け、大洋園の課題解決に適していると確信しました」と小宮山氏は語る。

職員からの抵抗も払拭

2022年9月に東京都に「次世代介護機器導入推進事業費補助 導入計画書」を提出。これが許可され、2023年3月に自動寝返り支援ベッド44台、褥瘡予防にもなる高機能マットレス44枚については自費で購入する。

「マットレスについても、硬さ、厚さ、寝心地、通気性を中心に確認し、床ずれ予防マットレスUF-71を選んでいます。耐久性・体圧分散性に優れたマットレスです」(小宮山氏)。

同年4月から夜間のみ自動寝返り支援機能を開始、問題点を確認・修正し、2階フロア昼夜での使用を本格化させた。使用ルールを決定し、3階フロアでも昼夜で寝返り支援機能を開始したのは9月からである。

「初めての機器ですから、不安を示す職員もいました。皮膚トラブルが起きたりすると、寝返り支援ベッドのせいではないかと疑ってしまうんですね」と、小宮山氏は説明する。傾斜を5度から10度に設定していることから傾きが弱く見えるのかもしれない。しかし、その原因が寝返り支援ベッドにないことを説明することで不安を払拭することができた。

また、職員の年齢は10代〜70代と幅広く、中にはリモコンが苦手な職員もいる。このため、全員が使えるまで繰り返し指導を重ねた。

疲労感や腰痛がなくなった

自動寝返り支援ベッドを使うようになって、夜間の2時間おきの体位変換がなくなり、身体的・精神的負担が軽減され、腕の巻き込み事故は0件になった。導入して半年後の2023年10月に職員にアンケートを実施し、顕著な効果を確認することができた。

たとえば、「疲労感がなくなった」と答えているのは日中・夜間とも「軽減された」と「やや軽減された」で96パーセントを示している。自動寝返り支援ベッドは、ほぼ確実に疲労の軽減を支援することを示している。

腰痛にも大きな数字が出ている。日中・夜間とも「軽減された」と「やや軽減された」で96パーセント。腰痛防止にも確実に効果のあることがわかる。

精神的負担の軽減では、日中で「軽減された」と「やや軽減された」で89パーセント、夜間で「軽減された」と「やや軽減された」で90パーセントとなっている。

「職員ばかりではありません。入居者へのサービス向上にも繋がっています」と、小宮山氏は強調する。

寝返り支援は自動で静かにゆっくり行われることから、入居者が目を覚ますことがない。介護職員は、それまで寝返り支援のために部屋を訪れていた時間を様子観察や記録に充てることができる。入居者の小さな変化や細かな気づきを得て、必要なサービスに提供することができるようになったのである。

個室にも導入していきたい

大洋園では導入早々から大きな手応えを得ている。これからの展望はいかがだろうか。

「自動寝返り支援ベッドは大成功でした。第一次として44台入れましたが、この数を増やしていきたい。個室の方にも入れたいと考えています」と小宮山氏は語る。

介護職員はもちろん、身体を動かすことが困難な入居者にも、自動寝返り支援ベッド導入の効果は大きい。介護職員募集の際の、差別化としても期待されている。